パブリッシャー

なんともうらやましいと人に思わせるような生活を送っている。ブルース・チャトウィンの『パタゴニア』を出版した出版人(パブリッシャー)で、チャトウィンは、彼の山小屋で作品を書いたことがある。病気のときには、カート・ヴォネガットから、心のこもった手紙を何通ももらっている(この本の中に内容が紹介されている)。それだけではない。あまり好感を持ってないようだが、スノードン卿とも面識があり、マーガレット王女とも話をしている。ロートシルトの地下蔵でえり抜きのワインをねだんの心配などせずに飲みたいだけ飲むなどということもできる。

しかし、なんといってもヘミングウェイの『移動祝祭日』を皮切りに、イアン・マッキューアン、ジュリアン・バーンズ、ピンチョン、ラシュディの代表作を出版していること。ガルシア・マルケスの『百年の孤独』も彼が出版した。父はケストナーの出版人で、迫害を恐れて国外に出たが、国に残った伯父たち三人はナチスによって収容所に送られ殺されている。フランクフルトで行われるブックフェアには仕事上行かねばならないが、ドイツ行きには今でも抵抗がある。

これだけすぐれた出版社であっても、アメリカのランダムハウスによって買収されてしまうのは、資本のグローバル化の影響だろうが、何とも苦々しい思いが残る。その結果、皮肉なことにいまでは、彼のいたジョナサン・ケイプ社はドイツ系の出版社に転売されている。出版界の裏事情や作家たちの人となりなど、その世界にいた人しか知り得ない打ち明け話満載で、本好きにはたまらない内容になっている。

2006-12-29 17:22:44 | Permalink | コメント(0) | Trackback(0)

忘年会再び

今年の忘年会は、今までにないほどひどかった。年々レベルが低下しているようだ。まず、会場が旧市街と新市街を隔てる宮川を渡った橋詰にある中華レストランというのが、困った。なにしろ、交通の便が悪い。予算の関係だろうか、市の中心部ならどこからでも来れるが、市街地を外れれば、乗り換えなしではこられない。乗り換えしてたら時間に間に合わない。飲まない人は車で来るからいいが、飲む者にとっては、交通手段の確保がいちばんなのだ。

結局、妻に送ってもらったが、妻も忘年会がかち合っていて、会場に車で行ったせいでノンアルコールビールで忘年会を終えたという。市の中心地なら二人ともバスで行けた。どちらもタクシーで往復させるような店ではない。センス・オブ・プロポーションの問題である。

中華ヴァイキングと銘打っているが、二時間で食べ放題飲み放題という割には料理の運ばれてくるのが遅い。はじまって半時間、ビールだけを飲まされた。そのあとも、注文した料理の出てくる順番がでたらめで、棒棒鶏が青椒肉絲のあとに出てくるわ、杏仁豆腐を食べ終わったあとで、麻婆豆腐が出てくるわと、胃の驚く展開には、あきれてしまった。

安い予算で、なんとかしようという幹事の考えはわからないではない。しかし、これでは憂さがたまる一方で、年忘れのしようがない。これだけ食べて、飲んだあとでボーリングに行くという面々と分かれ、帰ることにした。さいわい、家の近くに帰る人がいて、迎えの車に同乗させてもらったのはありがたかった。これで、川風に吹かれて帰宅していたら、治りかけた風邪がぶり返していたところだ。この寒いのにジョッキまで凍らせた生ビール(小さな親切、大きなお世話)では、心も体も温まるはずもなく、冷え冷えとした忘年会であった。

2006-12-23 10:27:51 | Permalink | コメント(0) | Trackback(0)

久しぶりの一日読書

図書館にリクエストしていた本がたまっていて、一週間以内に引き取りに来てほしいという催促の電話がかかってきた。年の瀬が近いからか、近頃めっきり仕事が忙しくなって、なかなか本を読む時間が持てないでいる。まあ、休日はあるのだけれど、そこはそれ、ドライブとか何だとかに時間がとられていて、以前ほどは読めないのだ。

何とか都合をつけて読めるものから読み、図書館に行くと、また一冊増えて6冊になっていた。一度に借りられるのは5冊までだから、泣く泣く本を選んで帰ってきた。

土曜日の朝から、さっそく書斎にこもって本を読みはじめた。長田弘の『知恵の悲しみの時代』は、日本の近現代史の中で戦争に関連する大きな節目になった年と、その年の出版物の中からこれと思われる著者と本を選び出し、その時代とどのように向かい合っていたかを丹念に読み解くこの読書を愛する詩人ならではの労作。

正午までに読み終え、図書館に返却し、残っていた一冊を借り出し、ついでに別の本を予約すると、すでに入っているとの返事。上巻を読まねば下巻を借りることはできないので、昼食後、あわてて、『ラビリンス』の上巻を読みかかる。

これは、キリスト教の異端カタリ派と聖杯伝説を素材にした歴史ミステリといったところか。南仏カルカッソンヌを舞台にして現代と13世紀を往き来するスケールの大きいロマンスである。上下二巻の分量だが、映画を見ているようなノリで読めるので上巻は夕刻までに読み終え、また図書館に走り、上巻と交換してすでに書架にならんでいた下巻を借りてきた。

今夜は忘年会という妻を所定の場所に車で送ると、夕食をすませた後はひたすら読書。結局午後九時には読み終えることができた。その間放っておかれたニケは、今少々ご機嫌斜めでキーボードの周りを歩き回っては鼻を鳴らしている。そろそろ、ニケの相手に戻ることにしよう。

2006-12-16 23:00:32 | Permalink | コメント(2) | Trackback(0)





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